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さ行の歌人

猿丸大夫
奥山に 紅葉踏みわけ 鳴く鹿の 声きく時ぞ 秋は悲しき

奥山で紅葉を踏み分けて鳴く鹿の声を聞くとき、秋の悲しさを感じる。

参議篁
わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと 人には告げよ 海人の釣舟

八十島を越えて漕ぎ出す海人の釣り船を人々に告げる。

三条右大臣
名にしおはば 逢坂山の さねかづら 人にしられで くるよしもがな

逢坂山のさねかづらの名を借りて、人々に知られずに会いに行きたいという思いを表現しています。

坂上是則
朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪

朝明け前、有明の月を見るまでに、吉野の里に白雪が降る。

参議等
浅茅生の 小野の篠原 しのぶれど あまりてなどか 人の恋しき

浅茅が生える小野の篠原が忍びつつ、なぜ人々は恋をするのかと問う。

左京大夫道雅
今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを 人づてならで 言ふよしもがな

今はただ思いを絶やさずにいたいとばかり思うが、それを人に伝える方法がない。

相模
恨みわび ほさぬ袖だに あるものを 恋に朽ちなむ 名こそ惜しけれ

恨み悲しみ、乾かぬ袖にあるものを、恋に朽ちてしまう名を惜しむ。

前大僧正行尊
もろともに あはれと思へ 山桜 花よりほかに 知る人もなし

山桜の美しさを共に感じる人がいない寂しさを表現している。

三条院
心にも あらでうき世に ながらへば 恋しかるべき 夜半の月かな

心にもないが、この世に生きていると、夜半の月を恋しく思う。

左京大夫顕輔
秋風に たなびく雲の 絶え間より もれ出づる月の 影のさやけさ

秋風にたなびく雲の間から、月の光が漏れ出す。

西行法師
嘆けとて 月やは物を 思はする かこち顔なる わが涙かな

嘆くと言っても、月は物を思うだろうか。私の涙が流れる顔を見て。

参議雅経
み吉野の 山の秋風 さ夜更けて ふるさと寒く 衣うつなり

吉野の山の秋風が夜更けに吹き、故郷が寒くなり、衣を打つ様子を描いている。

前大僧正慈円
おほけなく うき世の民に おほふかな わが立つ杣に 墨染の袖

世の中の人々に対して自分の悲しみを見せることはないが、自分の袖は涙で黒く染まっている。

持統天皇
春すぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山

春が過ぎ、夏が来たようだ。白妙の衣を干す天の香具山。

俊恵法師
夜もすがら 物思ふころは 明けやらで 閨のひまさへ つれなかりけり

夜通し思い悩む時間が明け方になっても終わらず、寝室の隙間から見える明るくなる空がつらいという情景。

寂蓮法師
村雨の 露もまだひぬ 真木の葉に 霧立ちのぼる 秋の夕暮れ

村雨の露がまだ乾かぬまま、真木の葉に霧が立ち上り、秋の夕暮れが描かれています。

式子内親王
玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば 忍ぶることの よわりもぞする

玉の緒が絶えるなら絶えてしまえばいい、それに耐えることが弱さを生む。

従二位家隆
風そよぐ ならの小川の 夕暮れは みそぎぞ夏の しるしなりける

夏の終わりを告げる風が、奈良の小川をそよぎ、夕暮れの風景を描いています。

順徳院
ももしきや 古き軒端の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり

古い軒端にもなお色鮮やかなしのぶが咲いており、その姿が昔を思い起こさせる。

周防内侍
春の夜の 夢ばかりなる 手枕に かひなく立たむ 名こそ惜しけれ

春の夜は夢ばかりの手枕に、無駄に立ち上がる名が惜しい。

崇徳院
瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ

滝川が岩にせかれて流れが速くなるが、最後には合流するという思いがある。

蝉丸
これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関

逢坂の関は、行く人も帰る人も、知り合いも知らない人も、皆が別れを感じる場所。

清少納言
夜をこめて 鳥のそらねは はかるとも よに逢坂の 関はゆるさじ

夜が深まり、鳥の鳴き声が聞こえる中で、逢坂の関を通ることが許されない悲しみを描いています。

僧正遍昭
天つ風 雲の通ひ路 吹き閉ぢよ をとめの姿 しばしとどめむ

天からの風が、雲の通り道を吹き閉じて、乙女の姿を少しの間留めてほしい。

素性法師
今来むと 言ひしばかりに 長月の 有明の月を 待ち出でつるかな

「今来る」と言ったばかりに、長月の有明の月を待ち出してしまった。

曾禰好忠
由良のとを 渡る舟人 かぢを絶え ゆくへも知らぬ 恋の道かな

由良の渡しを渡る舟人が、行き先も知らずに恋の道を進む情景を描いています。