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た行の歌人

平兼盛
しのぶれど 色に出でにけり わが恋は 物や思ふと 人の問ふまで

私の恋心を隠そうと思っても、顔色に出てしまい、人々が私の思いを問いただすまでになってしまった。

大弐三位
有馬山 猪名の笹原 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする

有馬山の猪名の笹原で風が吹くと、人々は忘れられるという情景を描いています。

待賢門院堀河
長からむ 心も知らず 黒髪の 乱れて今朝は 物をこそ思へ

長くなることを意識せずに、乱れた黒髪が今朝は物思いにふける。

天智天皇
秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ

秋の田の刈り穂の庵を見つつ、自分の袖は露に濡れている。

貞信公
小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ

小倉山の峰の紅葉、心があるならば、今一度の御行を待つだろう。

道因法師
思ひわび さても命は あるものを 憂きにたへぬは 涙なりけり

思い悩むが、命がある限り、悲しみに耐えられないのは涙である。

な行の歌人

二条院讃岐
わが袖は 潮干に見えぬ 沖の石の 人こそ知らね かわく間もなし

私の恋心は、潮が引いて見える沖の石のように、人々には知られていない。しかし、その恋心が乾くことはない。

入道前太政大臣
花さそふ 嵐の庭の 雪ならで ふりゆくものは わが身なりけり

嵐が吹き荒れる庭に雪が降るわけではなく、散っていくのは自分自身である。

能因法師
嵐吹く み室の山の もみぢ葉は 竜田の川の 錦なりけり

嵐が吹くと、み室の山の紅葉が竜田の川に散り、川面は錦のように美しくなる。